…占いの店の片付けを手伝い、
外に出ると陽が傾きかけていました✨
「アーラ、これから行く所が有ります。」
後ろからフィアーマの声がして
「え?何処へ行くのですか?」
フィアーマの言葉に驚いて振り向くと
「ほら…お迎えが来ましたわ。」
送って貰った馬車の御者が立っていて
「荷物を運びます。」
そう言って『等価交換』の入った袋を
フィアーマから受け取っていました。
馬車に乗り込むなり私は今日の事を
わくわくしながら話しました。
「タロットカード🃏1枚の中に色々な意味
…そして、組み合わせで意味も変わる。
色々な世界を映し出すのですね。
占って貰う人たちもとても真剣で真実を
語っているし…フィアーマさんを本気で
頼って相談されてましたね✨
それに合わせて沢山の様々な『等価交換』
なのだと思いました。」
フィアーマも微笑みながら…
「しっかり観察してましたね。
タロットカードは心の世界です💫✨
過去から現在の、そして未来の運命を
現実として視て行くのです。
深い信頼関係が無いと占いは出来ません。
そして、
等しい価値で交換しなければなりません。
貰い過ぎも無さすぎも駄目です。」
…私が溜息をつきながら、
「…人間界の
『約束事』は
難しいですね。
私は念じるだけで
行きたい場所に
行く事も出来る…
…天界とは違うのですね…。」
そう呟くと…
「そうです。
人間界の『約束事』は難しいのです。
知らない間にバランスを取られるのです。
気を付けないと運を下げますからね。」
不思議な言葉に聞こえました。
「運を下げる…って?」
フィアーマは少し複雑な顔をして
「占い師は運命を視ます。
運命を良くする為に相談に乗るのだから
運が幸せだとすれば、占い師に相談して
どうしたら幸せになれるかは、
どうしたら運を上げられるかと
同じになるのです。」
私は意味が感じられて
「相談して運が上がったのなら
『等価交換』で、その上がっただけの
価値を貰い過ぎたり無さ過ぎたりすると
バランスを取る為に運を交換してしまう
…と、いう事ですね?」
フィアーマは頷きました。
「そうです。
…ところで…アラディア様は
恋をした事が有りますか?💕」
唐突な質問に驚いて
「え?あ~どうでしょう⁉」
慌てて答えるとフィアーマは
楽しそうに笑いました。
街を外れ所に城の様な大きな屋敷が在り
その前で馬車は静かに止まりました。
「では、またお迎えに上がります。」
御者はそう言って私達を降ろすと
行ってしまいました。
屋敷の裏の出入口まで行き、
フィアーマはドアをノックしました。
そして、静かにドアが開きました。
背の高い男性がこちらを見ていました。
フィアーマは男性に頭を下げ、男性の後を
付いて中に入って行きました。
私はフィアーマの後を着いて行きながら
屋敷の中を観察していました。
屋敷の中はとても鮮やかな家具が豪華な
感じの部屋でした。
そして、階段を上って奥の方の部屋に案内
されました。
部屋の奥には身なりの裕福な感じの女性が
立っていて、私達に気が付くと…
「フィアーマさん、待っていましたよ!」
フィアーマの側まで走り寄って来ました。
「今日はビアンカさんに会う約束です。」
フィアーマは静かにお辞儀をしました。
夫人は頷き、
「ええ…こちらへお願いします。」
部屋の中は薄暗く奥にベッドが有り…
「…フィアーマさん?」
ベッドから女性の声が聞こえました。
「はい、ビアンカさん…
かなり具合が悪いようですね。
心の病ですね…。
私に話したい事が有るのですよね?
だから、聞きに来ましたよ。」
ビアンカは苦しそうでした。
「会いたかったです…
だから無理を言って…今日…
…市場に居ると聞いて使いを出して
…ごめんなさい。
フィアーマさんに相談して…から…
私は…私…
頑張ったつもりだけど…。」
ビアンカは手で顔を覆い泣いていました。
「フィアーマさん!どういう事ですか?」
夫人は怒っていました。
「ベアトリーチェ夫人、
お嬢様の事を私にお任せ頂けないのなら
私は帰りますが?」
夫人は黙って後ろに下がりました。
「ビアンカさん、
私の言葉を理解して出した結論ですか?
それがこの状態なら私は何も出来ません。
運命は…
自分の運命は自分でしか変えられないし、
選んだ事で誰かの運命に影響を与える。
そして、その影響を与えてしまった事は
結果としていずれ自分に返ってきます。
それが約束事と言ったはずですよね。」
フィアーマは強い口調でした。
「…私の選択は間違っていたの?
…私を育ててくれたお父様やお母様が
選んだ事を逆らうなんて出来ない!
だから…だから、
私は自分の運命なんて変えられないわ!」
苦しそうに涙を流しながら
ビアンカは言って枕に顔を埋めました。
「変えられない?そうですか?
お母様と本当の話し合いをしましたか?」
フィアーマは相変わらず冷静でした。
夫人は黙って真剣に聞いていました。
「ビアンカさん、
貴方はお母様の為だと思って出した結論は
誰も幸せではないこの状態ですよね。
ベアトリーチェ夫人、
ビアンカさんのこの状態に満足ですか?」
フィアーマは振り返り
ベアトリーチェ夫人を見ました。
「…娘の病気を望む母親などいません!」
夫人はそう答えてベッドに側に来て…
「ビアンカ、貴方の気持ちを聞かせて。」
フィアーマは優しく微笑み…✨
「では…私達はこれで失礼致します。
これから出す答えはお二人で出す結論。
何をどう選ぶかもお二人の覚悟です。
私は運命を変える事は出来ません。
私は運命を視てアドバイスするだけ…。
見守らせて頂きます。」
そう言うと部屋を出てしまいました。
その後ろから夫人が
「フィアーマさん、
感謝しております。
間違いを犯す
ところでした。
何と御礼したら
良いか解りません。
あの…金貨で良いでのしょうか?」
フィアーマはゆっくり振り返り…
「私はビアンカさんと等価交換してます。
結果が出せてから頂きに参ります。」
夫人は少し驚いた表情でした。
廊下には背の高い男性が待っていました。
その男性はビアンカの親族には見え無く
使用人の様でしたが…眼には涙を浮かべ
「ありがとうございました!」
そう言って深々とお辞儀をしました。
この男性はいったい誰なのだろう?
そんな疑問や…これで帰ってしまうのが
不思議な気持ちでした。
屋敷を出ると馬車が待っていました。
フィアーマは空を見上げて…
「では、森の城に帰りましょう。」
私は馬車に乗って沢山の疑問を考えて
ましたが…
「アラディア様、
お考えになっても解らない事も有ります。
アラディア様は人間では無いので人間の
約束事は解らないでしょう。
人間界に長く居ても…解らない事は沢山
有ります。
昼間会ったソフィアさんや娘さん、
ビアンカさんやベアトリーチェ夫人が
これからどんな決断をして…どの様な
運命を生きて行くのか解りません。
選ぶのは自分自身ですから。
恋とは…本当にややこしい感情ね…。」
私は、はっとしました。
「だから、フィアーマは私に恋をした事が
有るのか聞いたのですね!」
フィアーマは頷いて…
「そうです。
人生を狂わす程、心の病に至る程の感情。
時には命懸けになってしまうのですよ。
…私の両親の様に。」
私は…
聞けないでいた事をフィアーマは聞いて
良いと言ってるのだと思いました。
「フィアーマのお父様は何と等価交換して
人間になれたのですか?」
でも…まさかと思っていた答えでした!
「そうです…私です。」
私は今までの衝撃や、ぞっとするような
予感や直感はこの事だと解りました。
「そんな…そんな等価交換なんて…!
お母様がそんな事をするなんて!」
判っていて口からは言葉は虚しく出て来て
そして…涙も溢れてきました。
「アラディア様、
精霊から人間に成るとは…
それに等しい価値の有るモノとの交換…
だとしたら命に値するのは当然です。
そして、そんな願いを叶えられるのは
ディアナ様のような女神様か神様です。」
フィアーマは優しく微笑みました。
「…父はどうしても母と結婚したい。
どうしても人間になりたかったのですね。
ディアナ様はその気持ちを一時的な感情
恋は魔法や熱病と同じでいずれ覚める。
そう父を止めたそうです。
でも、父はどんな条件でも出来る事はする
そう言って引き下がらなかったので…
ディアナ様は等価交換を告げました。
それは二人の間に子供が産まれたら
その子供と交換で人間になる。
その条件で交わされました。
そして…間もなく私が産まれました。
そこでやっと気付いたのです。
父は自分の犯した罪を知ったのです。
命の交換など、絶対にしてはいけないと。
でも、
約束は交わされていて全ては遅く…
ディアナ様は父と母の前に現れました。
母は知らされて無く、父を責めました。
そして…父はディアナ様に
自分は精霊でも人間でも無く
このまま消え去っても良いから
子供と交換しないで欲しい!
そう…
ディアナ様と母に謝罪したのです。」
…馬車は城に着いていました。
馬車を降りるとポツリと…
「今夜は満月ですね…。」
フィアーマは月を見上げて呟きました。
私はフィアーマを見つめていましたが
満月を見上げて…
「恋とは…愚かだけれど…純粋ですね。」
…涙が溢れ零れました。
馬車を降りた二人は城に向かい歩きながら
「ディアナ様は…父の嘆き悲しむ姿に
心を打たれ…条件を出しました。
ディアナ様の条件は…
『…炎色の髪の子供にはフィアーマ(炎)の
名を付け、いずれ…アラディアが
この地上に降りる時の為に…
アラディアの人間界におけるの母となる
人物に育てなさい。』
そして、その条件を約束を守り父と母は
私を本当に大切に厳しく育てて…
アラディア様の地上におけるの母にと
育て上げ…
両親は人間として生涯を全うしました。
ディアナ様は何度となく私達の前に現れ
私の成長する姿に喜んで下さってました。
そして…
アラディア様の
事を嬉しそうに
お話して…
何度か合わせて
下さったのです。
森で一緒に遊んだのもディアナ様の計らい
なのです。
私は待っていました。
アラディア様がいらっしゃるのを
…心からお待ちしておりました。」
✨フィアーマは涙ぐみ…
本当に優しく微笑んでました✨
だからお母様は肌身離さなかった指輪を
フィアーマに渡したのだと解りました。
私は思わず…✨
「お母様って呼んだ方が良いのかしら❔」
笑いながら首を横に降りました❕
「フィアーマの方が良いです✨」
私も笑いながら✨
「じゃ、フィアーマ
私の事はアーラって呼んて下さい❕」
満月は二人の微笑みを照らしました…✨💫
この時はまだ…
フィアーマに人間界を習う理由…
これから私に起こる…歴史に残る物語り💫
…どんな物語りか💫
知る由も有りませんでしたが…
でも、
母ディアナが私をこの星に💫🌏💫
何かを託しているのだと直感して💫
覚悟を決めました…💫✨🙌✨💫
2017,7,11