翌朝…
アラディアは
フィアーマと
馬車に乗り、
森の外れの街に
行きました。
私は街に行くのは初めてなのでとても
嬉しいのと、フィアーマと似た感じの色の
シンプルなドレスを着て、いつもとは違う
自分を気に入ってました
フィアーマは馬車に乗ると私を見て
「アラディア様、楽しそうですね!
でも、何故お聞きにならないのですか?
色々と疑問だらけでしょう?」と
少し悪戯っぽく微笑みました。
私は少し不満で怒った様な声で
「私は自分でしっかり考えてから
それでも解らない事を質問する様にと
母から言われてます!
だから考えています!
母が私にフィアーマの心が読めない様に
魔法を掛けた事もです!」
フィアーマは持って来た大きな袋から
小さな袋を出して私の手に乗せました。
「これはアラディア様に用意した
タロットカードです。」
私は驚いて思わず…
「私に?嬉しい!見ても良いですか?」と
タロットカードを受け取りました!
「アラディア様、
タロットカードを私から習うのに、私の心
が読めては習う事にならないですよね?
だから、ディアナ様は魔法を掛けたのだと
思います。」
私は『成る程』と、納得しましたが…
「でも、フィアーマは人間なのですよね?
少女の頃に精霊や妖精と話もしてました!
私の心も読めていましたよね?」
フィアーマは頷き、
「…私の父は風の精霊のひとりなのです。
父は精霊ですが、
…母は人間で
ジプシーの踊り子
でした。
……だから
普通の人間には
無い力が備わって
生まれてきたのです
精霊の父と人間の母とはとても愛し合い
共に生活する事を望みまました。
でも、風の精霊もジプシーも土地を転々と
旅をしなければらない運命を背負っていて
一緒に暮らす事が出来ませんでした。
その為に父は精霊から人間になる事を
ディアナ様にお願いしたのです。
そして…
父はディアナ様と『等価交換』をして
叶えました。」
私は母の
『等価交換』の言葉を思い出しました!
「等価交換?
等価交換って何ですか?」
思わず大きな声になってしまった私とは
逆にフィアーマは静かな微笑みを浮かべ…
「アラディア様…
『等価交換』の意味が解らないのでしたら
これから私と行動する事で学ぶ事が出来る
はずです。」
そしてタロットカードを指差して、
「私の仕事は占い師です。
カードを視て必要な時に必要な事だけを
導きだします。
人の心や運命をカードから導くのです。
普段は視ない様にしてます。
私はアラディア様の心は読んでませんよ。
アラディア様のお顔を視ていれば大体の
お気持ちはわかりますから…」
私の方がフィアーマより遥かに長く生きて
いるはずなのに…
何故かフィアーマを母の様に感じました。
私は微笑みを浮かべて
「フィアーマ…宜しくお願い致します!」
私は色々と疑問は沢山有りましたが
何だか納得していました。
……そして、馬車が止まり
御者が訊ねました。
「フィアーマさん、市場の入り口ですが
本当にここまでで大丈夫ですか?」
フィアーマは立ち上がり
「ありがとうございます。
此処で大丈夫です、助かりました。」
フィアーマは馬車を降り
「さぁ、アラディア様、参りましょう!」
私が馬車を降りると…
「アラディア様、これを頭から被って
お顔を隠して下さい。」
渡された布をフィアーマの真似をして
被りました。
「それから、これから仕事の間は
アラディア様は私の御弟子さんとして
Alaアーラと呼びますね。」
「アーラ(翼)ですね!素敵です!」
私が嬉しそうな顔をしているのを見て
フィアーマも嬉しそうでした。
どうやら…
私は顔に気持ちが出てしまうらしい…と
いう事を、その時初めて分かりました…
市場は沢山の人々が賑わっていました。
色々な服装で様々な年齢の男女がいて
其々の表情しているようにみえました。
「アーラ!早く付いて来なさい。」
気が付くと、ずっと先の方にフィアーマは
歩いていました。
そして暫く歩いて少し人通りの少ない店の
前で止まり、私に眼で合図すると店の奥に
入っていってしまいました。
不思議な飾りの付いたカーテンが素敵な
狭いけど小綺麗な店でした。
私はカーテンを開けて入って行くと
もう、お客さまが待っていました。
「アーラ、私の後ろに行きなさい。」
フィアーマはもうテーブルに
付いていました。
そしてお客さまに向かって、
「私の新しい弟子のアーラですよ。」
私を紹介してくれました。
「フィアーマさんの御弟子さん!
じゃあ、才能が有るんだね~。
フィアーマさんは滅多に御弟子さんを
取らないから、楽しみだわ~。」
人の良さそうな年配の女性でした。
身なりは余り豊かとは言えなさそうな、
古着の様な服を着て靴も破けていました。
「アーラです。ごきげんよう」
私は思わずいつもの様に片手を胸に当て
膝を曲げて身体を沈める様な仕草の挨拶を
してしまうと…
「あれま~!なんてご丁寧な挨拶だわね。」
そう言って大きな声で笑らい、
「どこかのお姫様なのかい?」と、
フィアーマに聞いてました。
「ソフィアさん、時間が勿体無いわよ。
その後どうなったの?」
フィアーマはタロットカードを出して
シャッフルを始めました
すると、ソフィアさんは顔が真剣になり…
「娘は本当に好きだから諦めきれ無いと
言って帰りを待っているんだけどね。
相手の若者は仕事と言って出掛けてから
もう2ヶ月位も帰って来なくてね~。
不安で…食欲も無くて具合も悪くなって
来てどうしたら良いのか…。」
フィアーマはカードを並べて…
「娘さんのマリアさんの彼、出先で怪我を
して動けなかったみたいだけれど…
…骨折したようだわ。
でも、もうこちらに向かっている途中よ。
だから…もう明日か、明後日には帰って
来そうだから大丈夫よ!
マリアさんに伝えて上げて下さい。
安心させたら具合も良くなるわ。」
そう言うと小さな袋を出して
「一応、これをスープにひとつまみ入れて
飲まして上げて、少し苦いけど元気になる
わよ。」
ソフィアさんは笑顔になり
「ありがとうございます!
娘に伝えて、スープも飲ませるよ!」
そしてソフィアさんはフィアーマさんの
袋と交換するかの様に持って来た草の束を
渡しました。
「フィアーマさん、これで良いのかい?」
フィアーマは微笑み
「勿論よ。
これは薬草になるとっても貴重な草よ。
はい、占い代金頂きました。」
ソフィアさんは何度もお礼を言って
嬉しそうに帰っていきました。
ソフィアさんの後も何人も人達が悩みを
相談しては、何かと交換していました。
人は見掛けはどんなに明るくみえても
色々沢山の悩みが有ったりするもの…
そして、
フィアーマはとても信頼されていて…
誰の相談も真剣に乗っている。
みんな、明るい笑顔で帰って行く…
そして…相談料として何かを交換してる。
これが『等価交換』なのかしら?
いいえ…もっと何か有る……!!
何故か背筋にゾッとするような…
恐ろしい…何かを直感してました!
2017,6,30